はじめに
「最近、散歩の途中で立ち止まるようになった」「後ろ足がふらつくようになった」──
そんな老犬の変化に気づくと、不安になりますよね。
シニア期の犬にとって、後ろ足の衰えは自然な老化現象のひとつです。
年齢とともに筋肉や関節の働きが弱まり、少しずつ動きがゆっくりになります。
この記事では、老犬の後ろ足の衰えに気づいたときに飼い主さんができる、日常のケア・リハビリ方法・補助具の使い方をわかりやすく解説します。
老犬の後ろ足が弱る主な原因
後ろ足の力が入らない・歩けなくなるのは、加齢だけが理由ではありません。
いくつかの要因が重なって起こることが多いです。
① 筋力の低下
運動量が減ると、後ろ足の筋肉が自然に衰えます。
特に太ももの筋肉(大腿四頭筋)は「歩く力」を支える重要な部分です。
② 神経や関節のトラブル
椎間板ヘルニアや変形性関節症などで、後ろ足に力が入らなくなることがあります。
歩き方が左右にブレる、後ろ足を引きずる場合は要注意です。
③ 循環・代謝の低下
加齢により血流が悪くなり、関節や筋肉に酸素が行き届きにくくなります。
冷えが続くとさらに筋肉が硬くなることもあります。
④ 長時間の寝たきり
寝ている時間が長くなると、筋肉を使わなくなり衰えが進行します。
定期的に体位を変えることで、血流を保つことが大切です。
歩けない・ふらつく時に飼い主ができること
① 補助ハーネスでサポート
後ろ足を支える専用ハーネスを使うと、歩行や排泄の姿勢を無理なく保てます。
腰や足を優しく持ち上げることで、関節や筋肉への負担を軽減できます。
💡 コツ:
- 最初は短時間から慣らす
- 足の付け根が締めつけられないデザインを選ぶ
- 持ち上げすぎず、「一緒に歩く」ような感覚で支える
👉 補助グッズの例
- ウォーキングベルト:後ろ足を軽く支えるタイプ。段差やトイレ介助にも便利。
- 犬用車椅子:前足の力で動けるようサポート。完全麻痺や筋力低下が強い場合に有効。
(※長時間使用は避け、室内で短時間ずつ練習しましょう)
② 滑り止めマットで転倒防止
フローリングは滑りやすく、関節や腰への負担が増えます。
マットやカーペットを敷くことで、踏ん張りやすくなり安心して歩けます。
🐕 おすすめの設置場所:
- ご飯を食べる場所
- トイレ周辺
- 寝床から出入りするスペース
③ 散歩は「短くても毎日」が基本
運動不足は筋力低下を早めます。
10分程度の散歩でも、外の空気に触れることで心身の刺激になります。
🐾 続けるコツ:
- 朝晩の涼しい時間帯に歩く
- 坂道や階段は避ける
- 無理せず途中で休憩をはさむ
④ リハビリ・マッサージで血流改善
簡単なストレッチやマッサージで、筋肉のこわばりを防ぎ血流を促しましょう。
リハビリの目的は「動かす」ことよりも、「動かし続ける感覚を保つ」ことです。
家でできるリハビリの例
- 足首をやさしく回す(1日2〜3回)
- 太ももを手のひらで包むようにマッサージ
- 肩から腰にかけて毛並みに沿ってなでるようにさする
- ゆっくりと足を曲げ伸ばす(屈伸運動)
💡 ポイント:
- 強く押さない
- 「気持ちいい」と感じる程度の力でOK
- 痛がる・震える場合は中止
- 終わったら「よく頑張ったね」と声をかけて安心させましょう
後ろ足が動かない時のサインと受診の目安
次のような症状が見られたら、早めに動物病院へ相談を。
- 後ろ足を引きずる・ふらつく
- 足が震える、力が入らない
- 排泄時に立てない
- 急に動かなくなった
🩺 ポイント:
一時的な疲れではなく、神経や関節疾患が隠れている場合があります。
早期発見で回復できるケースも多いため、迷ったら診察を受けましょう。
老犬の後ろ足を守る生活環境づくり
寝床の工夫
- 沈み込みすぎない硬めのマットレス
- 寒暖差の少ない静かな場所
- 寝返りしやすい広さ
段差対策
- スロープを設置して昇り降りをサポート
- ソファやベッドへのジャンプを防ぐ工夫を
冷え対策
- 冬はブランケットや床暖房で保温
- 夏は25℃前後を目安にエアコン管理
飼い主さんの声かけがリハビリになる
愛犬にとって、飼い主さんの声は「安心のスイッチ」です。
「ゆっくりでいいよ」「大丈夫だよ」と声をかけながら歩くことで、緊張がほぐれ、前向きな気持ちでリハビリができます。
焦らず、少しずつ。
「昨日より一歩多く歩けた」その小さな前進が何よりのリハビリです。
まとめ|後ろ足のケアは“支える”より“寄り添う”
老犬の後ろ足ケアで大切なのは、無理をさせず「できる範囲で動かす」ことです。
完全に歩けなくなっても、寝たまま関節をやさしく動かすだけで血流が保たれます。
筋力を取り戻すよりも、安心して過ごせることを目標に。
今日の一歩が、明日の笑顔につながります。

