はじめに
犬のトイレの失敗は飼い主にとって大きな悩みです。「夜だけ粗相をする」「急に場所を変えた」「トイレシートを噛む」など、原因はさまざま。しかし正しい手順と環境づくりをすれば、多くの場合は改善できます。
このガイドでは、子犬/成犬それぞれの具体的手順、よくある失敗の原因と対処、外トイレへの移行、クレートの使い方、そして獣医に相談すべきサインまで、誰でも実践できる形で丁寧にまとめました。
犬を迎えたばかりで、しつけに悩んでいませんか?基本のしつけ方法はこちらで学べます → 犬のしつけ完全ガイド
重要な基本ルール(まずこれだけ守る)
- 一貫性:トイレ場所や合図(例:「トイレ」)は家族で統一する。
- タイミング:行動の直後に褒める。時間が経つと何を褒めたかわからない。
- 叱らない:失敗を叱ると隠れて排泄したり、恐怖から別の問題が出る。
- 記録する:排泄時間をメモするとパターンが分かりやすい。
用意するもの(すぐ買えるもの)
- トイレシート(ワイド推奨)または専用トイレトレー
- 小さなトレーニング用おやつ(柔らかくすぐ食べられるもの)
- リード(短め)/誘導用ハーネス
- ペット用酵素系消臭クリーナー(尿臭を分解)
- クレート(ハウストレーニング用・適正サイズ)
子犬のトイレしつけ(生後2〜6か月が学習しやすい時期)

目安とゴール
- 目標:日常生活で自分でトイレに行けるようにすること
- 期間目安:数日〜数週間で改善、定着は4〜8週間(個体差あり)
ステップ①:トイレの“場所”を決める(初日〜)
- 静かで犬が落ち着ける場所を1か所だけ選ぶ。
- 家の出入口や高交通域は避ける(犬が落ち着かない)。
- シートはケージ内・サークル内の一角、もしくはトイレコーナーに設置。
ステップ②:タイミングで誘導する(毎日)
- 排泄が出やすいタイミング:起床直後/食後15〜30分/遊んだ後/昼寝の後。
- そのタイミングでトイレへ連れて行く。到着後は30秒〜1分待つ(出なければ一旦離れて再チャレンジ)。
ステップ③:成功したら即褒める(秒単位が重要)
- 排泄の“瞬間”に「いい子!」「トイレできたね!」と声をかけ、すぐに小さなおやつを与える。
- ご褒美は嗜好性の高い小さなもの(嗜好性が高い=学習が早くなります)。
ステップ④:失敗したときの対応
- 発見したら感情的に叱らない。犬は「過去の行為」と叱責を結びつけられないため逆効果。
- 速やかに掃除してニオイを残さない(酵素系クリーナー推奨)。
- 失敗が多ければ「誘導間隔が長すぎる」「場所が不適切」などを疑う。
ステップ⑤:夜間の対応
- 子犬は膀胱が未発達なので夜間の排泄がある。
- 寝るときはクレートに入れ、トイレとは適度に距離を保つ(クレートは清潔に)。
- 必要なら深夜に一度だけ起こして外へ連れて行く(生後2〜3か月の間は必要な場合あり)。
成犬のトイレしつけ(しつけ直し・突然の粗相への対応)

成犬では「習慣」「マーキング」「医療的問題」が原因になります。まずは 医療チェック(尿検査など) を受けることを強く推奨します(特に急な症状の場合)。
成犬向けポイント
- 医療の除外:血尿・頻尿・痛みを伴う排尿は獣医へ。
- 習慣変更:室内→外に変えるなど環境変更は段階的に。
- マーキング:去勢/避妊の検討、環境の管理(窓や家具の匂い除去)と行動修正を併用。
室内トイレ(シート)から外トイレへ移行する方法
- 室内で安定して排泄できるようになってから段階を開始。
- 同じ合図(例:「トイレ」)を使い、短時間ずつ外での排泄を促す。
- 外で成功した瞬間に大げさに褒める→徐々におやつを減らす。
- 室内シートを少しずつ小さくしていき、最終的に撤去。
クレート(ハウストレーニング)の使い方と注意
- 利点:犬は本能的に寝床は汚したくないため、適切に使うと排泄を我慢する習慣がつきやすい。
- 注意:閉じ込め過ぎはストレスや健康被害に繋がる。年齢に応じた時間配分を守る(子犬は短時間を繰り返す)。
- クレートで寝かせる場合も、就寝前に必ずトイレに誘導すること。
ステップごとのしつけ法を理解したら、無駄吠えや甘噛みなど他の行動についても知っておくと便利です → 無駄吠えのしつけ方法
トラブルシューティング(よくある原因と対処法)
問題:同じ場所で繰り返す
原因:匂いが残っている/その場所が犬にとって安心スペース
対処:酵素系クリーナーで徹底除去、物理的にその場所にアクセスしにくくする
問題:夜だけ粗相する
原因:夜間の水分量/膀胱コントロール未熟/ストレス
対処:夜の給水を調整(極端に減らしすぎない)、寝る前に必ず排泄を促す、必要なら獣医へ相談
問題:突然の頻尿や血尿
対応:すぐに獣医へ(泌尿器感染症、結石、代謝疾患の疑い)
実践スケジュール例(子犬:生後2–3か月の1日)
時間帯 | 行動(誘導) |
---|---|
7:00 | 起床 → トイレ誘導 |
7:15 | 朝ごはん → 15–20分後トイレ誘導 |
10:00 | 遊んだ後トイレ誘導 |
12:30 | 昼ごはん → 15–20分後トイレ誘導 |
15:00 | 昼寝後トイレ誘導 |
18:00 | 夕ごはん → 15–20分後トイレ誘導 |
21:30 | 就寝前トイレ誘導 |
深夜 | 必要に応じて一回トイレへ(年齢に応じて判断) |
(年齢が上がるごとに誘導間隔を伸ばしていく)
成功の目安(期待できる期間)
- 初期の改善:数日〜2週間(毎日きちんと誘導できた場合)
- 定着:4〜8週間の継続で習慣化しやすい
- 成犬の改善:過去の習慣に依存するため数週間〜数か月のケースあり
いつ獣医師に相談するか(必ず確認)
- 血尿・排尿時の痛み・頻尿(急激な増加)
- 明らかに排泄パターンが変わった(特に高齢犬)
- 併発症状(食欲低下、嘔吐、元気消失)がある場合
- 精密検査(尿検査、血液検査、腹部超音波等)が必要かもしれません
実践チェックリスト
- トイレの場所は1か所に固定している
- 起床・食後・遊後に誘導している
- 排泄の瞬間に褒めてご褒美を与えている
- 失敗時は叱らず消臭している(酵素系)
- 夜間の対応(就寝前に必ず誘導)をしている
- 血尿や頻尿があれば獣医に相談している
FAQ(よくある質問)
Q1:トイレを覚えるのに何日かかりますか?
A:個体差が大きいですが、毎日適切に誘導していれば数日〜数週間で変化が出ます。定着には4〜8週間見てください。
Q2:シートを噛んでしまう場合は?
A:噛む原因は退屈や歯のむずがゆさ(生後の歯の生え替わり)など。噛んでも良いおもちゃで気をそらし、シートは厚手で噛みにくいタイプに替えると良い場合があります。
Q3:引っ越したらトイレを覚え直さないとダメ?
A:環境が変わると混乱することがあります。新しい場所でも上記と同じ手順(場所固定→タイミング→褒める)で再度習慣づけを行ってください。
参考・注意(信頼性について)
- 本記事は一般的な獣医学・動物行動学に基づく手順をまとめたものです。
- 個体差や既往歴がある場合は必ず かかりつけ獣医師 や 認定ドッグトレーナー/動物行動コンサルタント に相談してください。
まとめ
犬のトイレのしつけは、焦らず一歩ずつ進めることが成功の近道です。
この記事でご紹介したポイントを押さえれば、初めて犬を飼う方でもスムーズに習得できます。
重要なポイント
- トイレの場所を決めて、毎回同じ場所で行わせる
- 褒めるタイミングを逃さず、成功体験を積ませる
- 失敗したときは叱らず、清潔に保ちつつ再挑戦
ここまでトイレのしつけ方法を解説しました。散歩や社会化、その他行動のしつけも合わせて学びたい方はこちら → 犬のしつけ完全ガイド